雨の日曜日、そして誰もいないはずの生徒会室で一人業務に励む律子。
そこへ紛れ込んできた千尋と時乃。
思い出の糸をたぐりながら、昔と違ってしまった律子を思う千尋。
でも、時乃の目には「変わったけど、変わってない」と映る律子。
動きはそこそこあったにも関わらず、静かな詩情漂う回でした。
思い出は見る人によって、違うものになってしまう、ということ。
「あの頃の律ちゃんはこっち側にいたのに」と思う千尋は、律子の外的な立ち位置の方を捕らえている感じで、対する時乃は多くを語ったわけではなかったですけど、どっちかというと、内面的なところを見ていたんでしょう。
その2人の真中に置かれた、律子のココアと羊羹。
結局、律子は千尋たちに冷淡になったわけでもなければ、なにか因縁めいたことを感じていたわけでもなかった、ってことですね。
律子の心がどこを向いて、どちらを見ているのか、っていうのが今後の感心事項になってきそう。
その意味で、最後、門のところまでだけ送っていこうとして駆け出した千尋と、それを悲しそうに見ていた時乃の表情がかなり暗示的でした。
予告で言うように、千尋と律子の接近、になるのかなぁ。だとししたらちょっと時乃が寂しいね。
今まで割とはでな展開でしたから、こういう静かな情景になると、キャラの内面にまでおりていくようで、そこらへんの描写がなんとも心地よかったです。
ただ、作画が、ね。悪くはないんですが、ピンでアップになると、八雲剣豪絵とのギャップがモロに感じられて、正直つらいです。
特に、口がデカ過ぎるのが、違和感あるんですよねぇ、時乃といい、律子といい。
それにしても、羊羹は和菓子の究極ですか・・・。
日独混血娘が言ってることなんで、それほど気にすることもないかな。(^_^;
その他モロモロ。
キャラ的には実は一番面白げな、蓮子と山田。まぁ、前のOVAでもそんな感じでしたけど。
今回は潜水艦。どうやって、あの池に入れたんだ。(笑)
副会長が巫女さん、っていうのも、なにかそのうちエピソードがあるといいんですが。12話らしいので、きついかな。
12話と、はっきり言明してしまった、今回の「次回予告」。
今回は、笹原と高坂でした。
「1クール12本なのに、本筋すすんでないけどいいの?」って、いつも以上に、厳しいつっこみですね。
この予告が枠物語になっている、っていう構図ですけど、段々強まってきているようです。
げんしけんの本編の方もテレビで続編やってほしいところですなぁ。荻上が水橋なんだし。
一応、可愛い女子小学生が5人出てきて、魔法少女になったりする話なので、分類的には、おっきなお友達用の萌え系、ととられても仕方ないところではあるんですが、小学生くらいの疎外感、孤独感が実によく描かれてまいすね。
オトナになると、この目線の低さっ、ていうのがなかなか再現しにくいのですが、この美紗緒のすぐにくじけてしまう心、っていうのは、低い目腺の枠内で、かなりうまく表現されてると思います。
この美紗緒の弱い心を「ウザい」とか「鬱陶しい」とか感じてしまうと、もうオッサンなんだなぁ、と思ってしまったりしてしまうところ。(笑)
小学生の頃って、まだまだ家族との絆が太いし、世界もものすごく狭いから、ここで疎外感を味わってしまうと、どうしようもなくなるんですよね。
美紗緒の「理解されない」という挫折感、孤独感も、この文脈で見ると、痛いほど伝わってきます。
そしてそれを受け止めてあげる心、っていうのは、もう少し成長すると、優越感だったり、変な社会意識だったりしてくるのですが、このくらいの年齢だと、美紗緒が好きだから、ほんとに心配になって、そして受け止めてやりたい、っていう気持ちなんでしょう。砂沙美にはそれを感じます。
プリティーサミーのときでも、「砂沙美が美紗緒を守ってあげているのは優越感だ」と見ていた友人がいたんですが、それってかなりオトナの意見だと思ってしまうんですよね。私は、砂沙美が純粋に美紗緒を好きな気持ちから出ていたのだ、と思っています。プリサミのときも、今のシリーズも。
もっともモンタの方は、どっちとも取れますけどね、男ですから。(笑)
ともかく、モンタの花火で仲良くなっていってしまう下りは、単純といえば単純なんですけど、砂沙美のそういう心が伝わったんでしょうねぇ、と、率直に感じておきたいところです。
もう少し上の年齢なら、いろいろ打算もあるんでしょうけど。
ここだけで終ってたら、いい話だったのが、衣斗紀の侵入による水魔法の乱舞。
美紗緒は「魔女さんはそんなことはしない」って言ってましたけど、美紗緒の頭にあった「魔女さん」て、衣斗紀のことではなかったと思います。
でも、衣斗紀に同調してしまうのかなぁ、とちょっぴり心配だったり。
砂沙美とは一緒に笑うことができるようになっていたので、意地で言ったのでもないと思います。やっぱり心の傷が残ってる、ってことなのかなぁ。
髪を切っちゃう、っていうことにつながっていきそうだけど、はてさて。
美紗緒ファンにとってはけっこう辛い展開が続きますけど、そのおかげで今シリーズは間違いなく美紗緒メインになってるわけで(そのことによって、砂沙美の心がひきたっているっ、ていう効果もありますが)美紗緒の心を追っていける楽しみはありますね。
その他についても、少し。
わりと普通の女子小学生になってきた真琴と、ちょっとおとなっぽい分、誰よりも場の空気を呼んでる(ように見える)司。
描写部分は少ないんですが、さりげなく、でも一貫しているのがよくわかる部分で、孤独の辛さは、たぶん美紗緒の次に知っている司が、今後美紗緒に対して、砂沙美とは違うなんらかのアプローチをしてくれそうな気もします。
とりあえず、衣斗紀出現で、次は動きの多い回になりそうですね。
最終回。
物語のシメとしては良い感じの一段落でした。
決して円環が閉じた、というラストではありませんでしたが、たぶん原作がまだ終了していないであろうことを思いますと、いいラストだったのではないでしょうか。もっとも、原作未読組なので、あくまで推測ですが。(^_^;
大きな事件としては、前回のローナ・ファウナ編で終了して、2話かけてイクスの存在と、浄眼機との関係を説明してくれたような結末、まずまずだったと思います。
いくつか、もう少し説明してほしかったところもなくはなかったのですが、原作つきですから、どの程度踏み出していいのか、ってところもありますしね。
もう少し説明がほしかったところとしては、ザ・サードの生体機序と組織、そして浄眼機があれほどまでにザ・サード内部で重視されている明確な根拠とか、かな。雰囲気としてはそこそこ語られてはいましたが。
ボギーの推論型コンピューターについても、解釈があればもう少し楽しめたかも、です。
一方、今回語られた、イクスの説明。
「観察者」「決定者」というコトバの響き以上のものはありませんでしたけど、これはなんとなくわかります。
このなんとなくわかる、っていうのが、物語として、うまく機能していた証拠となるので、具体性はなかったにせよ、SFリテラシーみたいな側面もあるので、原作つき作品としては、まぁまぁ納得できるところです。
実は懸念していたのは「イクスが神、あるいは創造主だ」みたいな、一点にまとめてしまうような結論だったんですが、そういう方向には行かなかったので一安心でした。(笑)
観察者たる存在の語る過去、流れ込む感情として情報が伝達されてましたけど、唯一原作でどうなってるのか興味がわいたところですね。
途中までは「猿の惑星かい」と思ってしまったものですから。(^_^;
ただ、それと相前後して、火之香の過去の映像として、人間、人間以外を問わず、様々な感情と接触してきて、観察者の言う「さまざまな心を抱きしめた」という流れが、実にこの作品のウェットな叙情を語ってくれてましたから、あんまりそういう具体性としての種明かしについては、些末なことのように感じてしまった次第です。
そう、はっきり語らなかった、っていうのが、良い方向で出ていたと思うわけなんですね。そこが、まだまだ説明してほしくはあるけど、なんとなくいい読後感みたいなものを感じてしまった理由です。
最後の、火之香を巡る、イクスと浄眼機のコトバも、多少世俗の領域に踏み込みすぎの感がなくもなかったものの、いい味付けでした。
イクス「今度は私が貴女の心を抱きしめたい」
浄眼機「あれを告白と言わずして何と言う」
変に哲学的になりすぎてしまったところを引き戻した効果もありましたし、あれはあれでよかったです。ちょっとコッ恥ずかしかったですけどね。(^_^;
作画は、キャラデの山岡さん自らあたってくれましたので、統一感はとれていたと思います。
最初の自動歩兵のCGAが簡単にふっとんでしまったのは、ちょっと笑みがこぼれてしまったところでもありましたが。(^_^;
作画に関しては、途中で設定を逸脱した回が2回ほどありましたので、全体としてはそれほど誉められたものではありませんでしたが、WoWWoW作品としての水準はギリギリあったんじゃないかな、とやや甘い評価です。
録画装置が、WoWWoWだけ別の部屋にあった関係で、感想記録がやや遅れたりとばしたりしたこともありましたけど、概ね楽しめました。
良質のライトSFだったと思います。