声優脚本4本目の能登脚本・・・だったんですが。
脚本云々より、作画の美麗さ、モノクロ画面を多用してその効果の方に目を奪われるすばらしさ。
『Strikers』や『ケンイチ』と違って、こちらはどういう作画チームか、っていうのを十分に理解したつくりになっていて、こういうのを見ると、アニメの醍醐味、みたいなのが伝わってきますね。
もちろん脚本も、プロとしては普通だと思いますが、素人としてはかなり上のデキで、けっこう満足度の高い、まるで1編の詩のような趣でした。
まずモノクロ画面。
冒頭のアバンタイトルからして色を落とす徹底ぶり。
アバンタイトル、一応毎回微妙に変えてはいるんですが、今回が一番インパクトがありました。
OPにおいても、そのモノクロ画面の多用だったんですが、モノクロ画面ではなく、キーポイントには色を乗せてましたので、効果、演出、ということはすぐにわかるようにはなっているんですが、静止画の美麗さ、ラインのやわらかさがぬきんでた作画ですので、モノクロというより水墨画を見せてもらっているような、そんな枯れた味わいもあったと思います。
こういう手法自体はときどきあって、決して新しいわけではないのですが、得られる効果としては良かったように思います。
そして後半で描かれる、帯の色・・・。
まさにこのために、とさえ思えてしまうあでやかさ。
確かに、淡い色合いとか、くすんだ色合い、っていうのは、ふだんの原色の中からですと、埋没してしまいますから、今回この効果が一番よく出ていたところだと思います。
大昔から、モノクロに色をワンポイントですりこむとき、「赤」を主体として原色に近い色を使っての対比が印象的に使われてきたように思うのですが、今回の絵ではむしろ、モノクロに近い、淡い色を効果的に示すのに有効でした。ここ以外ですと、舞い散る花びらとかね。
そして紅。
こちらは手法としては、伝統的な、モノクロの中のワンポイントの「赤」で、これってそれこそ20世紀前半のサイレント映画の時代から、フィルム着色の手法で使われてきたものでしたけど、この『桃花月憚』の世界観、あるいは少女達の艶に、まさにピッタリと適合していた、いい紅だったと思います。
薬指で、そっと相手の唇にさす紅。
その色は、ラインで切ったような色ではなく、筆でぼかすように描かれていく紅。
実に素晴らしい画面だったと思います。
テイストとしては、『絶望先生』に近いものも感じるんですが、ベクトルがまったく違いましたね。
いつもは、豊満なエロスを見せてくれましたけど、今回は美術的といいますか、技巧的なエロスを見せていただいた気分です。
シナリオについては、どこまでこの効果を意識して書かれていたか、がちょっとわからないのですが、進行にはよくあっていたと思います。
桃香が他の女の子と一緒にいるところを見て、桃花が「桃香ちゃんに触れてほしくない」ともらすところは、桃花のセリフとして考えるとやや微妙ではあったものの、心情の吐露としてはいいタイミング、いい表現だったと思います。
つうことで、かなり遅れましたけど、満足度の高い回だった、と言えましょう。