水玉の中で観戦するサッキュバス・・・ステキすぎます。(笑)
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なんちゅう、えっちっちーな観戦スタイルでございましょう。
アーメイが戦死したり、絶望の中からジルが盾としての決意を語ったり、ニーバとファティナの思惑の違う会話があったりと、他にも筋としての見所が満載だったんですが、このすばらしい浮遊水滴の中での観戦がすばらしすぎて、印象をかなりもってかれてしまったような感じです。(^_^;
本作のヒロイン4人、ファティナ、カーヤ、クーパ、そしてサッキュバスと、それぞれに個性の違い、目的の違い、出自の違いが極端にありながら、作品には有機的にからみあっていまして、人物主体で見ても、ストーリィ・ラインで見ても、その魅力が生きる演出になってまして、さすがにうまいです。面白いですし。
最後に出てきたこのサッキュバスなんですが、ニーバに取り付いて、その本心をズバズバ言い当てたり、この浮遊水の中での裸身での観察といい、3人とはまったく違う魅力を見せてくれまして、ここにきてそのすばらしさが威力を見せ始めてきたようです。
これだけの多人数を、たった1クールで回してみせる、というのは相当の技術力なんですが、そういうのをあまり感じさせず、私のように原作ゲームをまったく知らない人間でも普通以上に楽しく見せてくれますし、最初まったく期待してなかったのが嘘のように面白いつくりになってきました。
あと1話での終了がまことにもって残念です。
さて、筋の方から印象深かったところを拾っておきます。
まず、ニーバとファティナの会話に、ニーバにだけ見える形で入ってくるサッキュバス。
ファティナがニーバに問います。
「私達の目的は財宝だけよね?」不安げな様子が伝わってくる問いかけでした。
「もちろんだ」と即答で返すニーバ。
ところが肩口にしなだれかかるようにあらわれるサッキュバスが、ニーバの目にだけ映る形で一言。
「うそ」
ニーバの謎めいた目的に不安を感じながらも、それでもニーバを信じたいと思っているファティナ、そのファティナを愛しているそぶりを見せながら、大きな目的のために虚言を紡ぐニーバ。
そんなニーバに対して、サッキュバスがさらに
「心にもないことを」
ここの演出は最高に面白かったです。
ファティナの弱い部分。
ニーバの崇高ではあるけれど、大事の前の小事としてのずるい部分。
それをからかうサッキュバスの冷たい部分。
実にうまく有機的に表れていたと思います。
そう、こっちを主軸にしても、十分お話になりそうなくらい、深く、濃い人間模様。
そして今回のもう一つの柱。
アーメイの死と、それが仲間の上にもたらしたもの。
まずアーメイ。決して無謀な策ではなく、勝算と好機を見出していったにも関わらず、その敗北。
その絶命に際して、仲間に声をかけていくんですが、このシーンもまたすばらしいものでした。
まずクーパとメルトに声をかけます。
「クーパを大切にしてやって」というアーメイの言葉に反論しようとするも、その最後が近いことを知って、肯定するメルト。その悲しみ、その無念。
あのシーンは、いつも軽薄なメルトが描かれていただけに、グッとくるものでした。
そしてカーヤに。
カーヤは必死で治癒の魔法をかけようとしますが、力及びません。
胸に大望を宿すがゆえに、どこか仲間を利用しているような言動が目立ってましたけど、その大望にも関わらず、アーメイの死、自分の力が及ばぬことに、強い悲しみを感じ、涙をこぼしてました。
アーメイを失う悲しみもさることながら、あの涙ゆえに、逆に、そういった友の死を見つめなければならないカーヤの望みの大きさ、その望みに引き裂かれようとする心が伝わってくる、これもまた名シーン。
そして同じように自らの無力を悟り、絶望の淵に沈みこみながらも、それでもそこから這い上がっていこうとするジルの姿。
今回のサブタイ「ただ一枚の盾として」
ジルのことば。
「それでも僕は盾になりたい」
「皆を守る一枚の盾に」
ここにジルの成長があるのでしょう。
彼の場合、知識としては知っていても、体験しなければ前に進めない、というようなところがありました。
アーメイの死は、ほとんどその目的を投げ捨ててしまってもいいくらいの重さ、大きさをもって迫ってきますが、それでもそこから立ち上がり、盾になりたいと願います。
「皆を守りたい」という言葉はいままでも出てきましたけど、ニーバに言われたセリフ、そしてアーメイの死、というつらい事実を通して発せられるそのことばは、似てはいても、重さが全然違ってきた、ということですね。
RPGの醍醐味の一つに、人物の成長があります。
ゲームの上では、能力値の上昇だったり、武器の数だったりするわけですが、物語としての人間的成長、という面が、今回実にうまく出ていたと思うところです。
賀東脚本、今までそれほどすごいとは感じませんでしたけど、今回だけは、鳥肌が立つくらいすばらしかったです。
次回、その賀東脚本による最終回、ということで、非常にもったいない気分ではありますが、またしっかりと堪能させてもらおうと思います。